相続における生命保険金の役割と注意点

生命保険金は、相続税において節税や納税資金として活用されることがありますが、
うっかり相続税の申告に含めることを忘れてしまうことも多い財産です。

これは、納税者の誤解や失念、税理士への説明が漏れた、という理由があります。
今回は、この相続における生命保険金について、
・相続税の取り扱い
・なぜ誤解が生じてしまうのか、
・相続税の計算から漏れてしまった場合のペナルティ
についてポイント解説します。

要注意して、税務署に”隠蔽仮装だ”と指摘され、
多額の税金を急に負担することに…なんてならないようにしましょう。

◆被相続人が保険料を負担した生命保険金は、相続税では申告対象

結論から言えば、被相続人が保険料を負担した生命保険金は、相続税では申告対象です。

この場合の生命保険金は、民法上の相続財産ではありません。
しかし、経済的な実質は、被相続人の死亡によって財産を取得するため
相続財産又は遺贈財産とみなして相続税が課税されます。

相続税での取り扱いは?非課税措置がある

この場合の生命保険金については、法定相続人1人当たり500万円の非課税措置があります。
つまり、その限度額を超える部分のみの課税で済みます。

例えば、法定相続人が2人、生命保険金額が1,200万円だった場合、
非課税の枠が1,000万円あるため、それを超える200万円が相続税の課税対象となる、ということです。
※ほかに基礎控除額などがあるので、必ずしも相続税が係るとは限りません※

遺産分割や遺留分での生命保険料の取り扱いは?

生命保険金は特定の相続人だけが取得するもの。
そのため、遺産分割で考慮すべきかが問題になります。
この点、「保険金の額、遺産総額に対する比率、同居の有無、被相続人に対する介護の度合い、
各相続人の生活実態などの諸事情を総合考慮して相続人の間で
不公平が是認できないほどに著しい特段の事情がある場合は、
特別受益に準じて持戻しの対象と解するのが相当である」と判示した判例があります。
要するに、
・直ちに遺留分の計算に入れるわけではない
・ただし、著しく事情の場合には計算に入れる
ということです。

極端な例だと、生命保険金が1億円でそのほかの相続財産が100万円だった場合などは注意が必要です。

◆誤解の原因ー生命保険金は相続財産ではない!

相続税の計算に入れるのに、なぜ誤解が生じて、申告漏れなどが生じてしまうのでしょうか?

これは、保険金の法律上の取り扱いと相続税の計算上の取り扱いの違いが一つの原因になっているかもしれません。

法律上は、生命保険金は相続によって被相続人から承継されるものではありません
これは”保険金受取人の固有の財産”という建付けになり、遺産分割の対象とはなりません
つまり、生命保険金をもらう人のモノ(保険料を負担した人からもらったもの、ではない)ということです。

しかも、被相続人が生前、相続人に贈与した生計の資本、
養子縁組や婚姻のための贈与(特別受益)にも、基本的には該当しません。

そのため、”生命保険金が相続税の申告対象にはならない”と勘違いしてしまう可能性があります。

一方で、相続税の計算上は、この場合の生命保険金は、相続財産とみなして計算する、ことになっています。

 

◆申告漏れた場合のペナルティ

税務調査で生命保険金の申告漏れが判明した場合、不足税額に加えて、以下ペナルティがあります。

・滞税(納付遅延期間の利子に相当)
・過少申告加算税(10%又は15%)

また申告漏れが隠蔽仮装であると認定された場合は、過少申告加算税に代えて

・重加算税(35%又は45%)

が課されますので、合計約1.5倍もの税負担が生ずる可能性があります。

まとめ

ポイントをまとめると以下の通りです。
・被相続人が保険料を負担した生命保険金は、相続税の課税対象
・非課税金枠がある
・漏れた場合には重いペナルティがある
生命保険金を受け取る人がいるときは、必ず契約内容を見て課税上の取扱いの確認をしましょう。