2022年の税制改正において、ひっそりと厳しい規定が追加されました。

その内容と影響、具体例、注意点をご紹介します。

・改正となった【簿外経費の否認】
・簿外経費否認の具体例
・全員要注意!他の注意点

 

改正で追加された【簿外経費の否認】とは

・対象税目:所得税と法人税
・対象者:事実の隠蔽や仮装がある、または、無申告の納税者(個人、法人)
・いつから:令和5年分から(法人の場合は令和5年以降に開始する事業年度から)

平たくいえば、
「申告していない、申告していても隠したり偽ったりしているような人(会社)が、
後から主張する経費は認めない」
という内容です。

そのような納税者の税務調査において、後から経費を主張され、
その精査に膨大な徴税コストがかかってしまうことがあったことが背景。
つまり、元々きちんと納税していなかった人や会社について、
さらに国民の税金を使ってまで対応していられない、ということです。

簿外経費否認の具体例は?

例えば、無申告の会社に対して税務調査が来ます。
税務調査において、「所得1千万円あります!」と指摘。
それに対して、会社は「いや、帳簿に記載漏れていたが、これも経費です」
と多数のレシート、領収書などを出してきたとします。

従来はこのレシートや領収書が経費であることを調査しなくてはならず、
しかも、元々申告をしないような会社の事実を探ることは大変なことです。
ここに多大なヒトや時間がかかっていました。

これについて、「損金や必要経費として認めません」となりました。

全員要注意!他の注意点

ここまで読むと「確かにけしからん!真面目に申告している私たちには関係がない」と思えます。

「隠蔽・仮装」というのは、非常に重い脱税行為として、厳しく罰せられますが、
これに該当するのは相当悪質であることが常でした。

そこで注意すべきことがあります。

税務調査においては、「質疑応答記録書」や「念書」のようなものに一筆を書かされることがあります。
実際に弊所でも経験があり、裁判例などでも登場するこれらの書類の「読み方」「書きぶり」によっては、
あとから「仮装・隠ぺいしたと当人が認めている」とされてしまうことがあります。
(税務調査や租税法に関する書籍、判例で確認できます)

つまり、「隠ぺい、仮装、無申告」といったものは関係ないと思っていた自分が、
急にその対象となり、今回の改正の対象となりうる点によく気をつけましょう。

具体的には、税理士や税理士登録している弁護士に税務調査の同席を頼むこと。
そのためには、事前に顧問契約して会社の状況をしっかり理解しておいていただくことが重要です。

(参考:税制改正の概要:財務省HP/エヌピー通信社月間所長のミカタ2022年5月号ほか)