令和3年8月2日に施行された「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」
税制ではありますが、国税庁ではなく、中小企業庁が主導しています。

今回はこの「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」について、
そのうちの「準備金の積み立て」に関して、以下のポイントを解説します。
「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」内容
・制度の目的
・適用後の注意点

中小企業事業再編投資損失準備金制度の内容

同制度の内容を一言でいえば、「認定を受けたならば設備投資、雇用、M&Aに関して優遇する」というもの。

その中の、M&A(準備金の積み立て)に関して言えば、
M&Aによって取得した株式の70%を損金に算入することができる」制度です。

詳細は…

認定計画を受けるほかにも要件があります。

期間:令和6年3月31日までに
要件1:株式取得によってM&Aを実施する場合(取得価額10億円以下に限る)に、
・要件2:株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の70%以下の金額を準備金として積み立てた時は、
・その事業年度において損金算入される、
というものです。

制度の目的は?

この制度の趣旨として、
「その株式等の価格の低落による損失に備えるため」と税制改正大綱にあります。
また、財務省の税制改正パンフレットには、
M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から」とあります。
さらに、「税制改正の解説」でも、
中小企業M&A市場の未成熟さや費用負担の困難性が生む投資リスクに備える為の支援措置だ、としています。

つまり、中小企業のM&Aのハードルを下げるための制度といえます。

 

注意点-益金算入やそのほかの落とし穴…

この制度にはもちろん注意点もあります。

まずは要件にもなっている認定計画を受けること。
認定計画は
「人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画」
とあります。

 

次に、この準備金、積み立て後5年を経過した事業年度以降5年間で準備金残高の均等額を取り崩して、
益金算入する点も理解しておく必要があります。

つまり、基本的には課税の繰り延べといえるかもしれません。

 

他にも落とし穴として、次のような場合には制度の準備金の取り消しがおきますので要注意です。
経営力向上計画の認定取消し
・本税制対象子会社の解散・合併消滅
・その株式の帳簿価額の減額(評価減や資本剰余金分配など)
・その株式の譲渡
青色申告の取消

投資リスクは下がってもこのように税務リスクとは付き合っていかないといけなくなりますので、
うまく活用してきたいところです。