株式等に係る配当や譲渡利益について、所得税と住民税では異なる課税方法を選択することができます。

この点について、以下のポイントを解説します。
・その方法は?
・そもそも課税方式の違いとは?
・どちらが有利か?
・これまでの動向

その方法は?

その方法はというと、

第二表「住民税・事業税に関する事項」の「特定配当等・特定株式譲渡所得の全部の申告不要」欄に「〇」をする

だけです。

そもそも課税方式の違いとは?

上場株式等の配当所得の課税方式には、①総合課税、②申告分離課税、③申告不要制度があります。

①総合課税…他の所得と合算して累進税率で課税
②申告分離課税…他の所得と分けて、別途課税
③申告不要制度…そもそも申告しない(源泉徴収だけで終わり)

異なる課税方式を選べる、ということは、
上場株式等の配当所得や源泉徴収選択口座内の譲渡所得等について、
所得税では総合課税、住民税では申告不要、とすることが可能であるということです。

どちらが有利か?

そこで、どの方式が有利(お得)なのか、というのが問題になります。

この点については、例えば、
課税総所得金額が1000万円以下の場合(上場株式等の譲渡損失なし)であれば、
所得税では総合課税、個人住民税では申告分離課税又は申告不要制度を選択するパターンが一般的には有利です

また、国民健康保険料などの計算は、個人住民税に係る申告による所得を基にしていますので、
税金だけでなくそこまで考慮に入れるとなかなか複雑になりますので、要注意です。

これまでの動向など

市区町村

異なる課税方式を選択できるというのは、過去においても同様でした。

しかし、所得税の確定申告書の住民税に係る記載欄には、住民税での課税方式の選択欄がありませんでした。
従って、所得税と住民税で、異なる課税方式を選択する場合には、
個人住民税納税通知書送達日(5月下旬頃)前に、所得税とは異なる課税方式選択の旨を伝える申告書等の提出が必要でした。

なお、この課税方式選択に係る住民税額や保険料額の長期に亘る決定誤りがあったと公表する自治体が多数ありました。

税理士会

日本税理士会連合会は税制改正建議書で、この点を指摘し、所得税の申告書のみでクリアになるように要望していました。

まとめ

Pision合同会計事務所でもご依頼の多い株式等の配当、譲渡の申告ですが、
このように意外と難しい論点が潜んでいます。
もし不安や心配の場合にはご依頼、ご相談ください。
いずれにしても、令和3年分からの所得税の確定申告書作成では、住民税欄の附記事項記載に要注意です。

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