個人の確定申告シーズンと重なるように12月決算の法人が、
シーズンが終わるころには3月決算の法人が、決算、申告に向けて動き出します。

今回は、中小企業に該当する令和3年12月決算、令和4年3月決算の法人に向けて、
所得拡大促進税制を概説したいと思います!

タイトルにある通り、結論としては、「給与を上げればかなり税金がダウンする!」ものですので、
是非適用を検討してみて下さい。

・所得拡大促進税制とは
・所得拡大促進税制の控除額は
・所得拡大促進税制の要件
・令和3年12月末決算と令和4年3月末決算での違いは
・3月決算はまだ間に合う!やっといたほうがいいこと!

所得拡大促進税制とは

所得拡大促進税制とは、「従業員に支払う給料が、前年より増えていれば、税金を控除(ダウン)する」制度です。

同制度は、平成25年から導入された時限措置。
時限措置ですが、社会の状況に合わせて、要件等を変えながら延長し、
現在まで適用がる制度となっております。

この税制は、大企業と中小企業の要件が異なっています。
今回は中小企業向けの内容を概説します。


所得拡大促進税制の控除額は

所得拡大促進税額の控除額は、

前年比給与増加額 × 15%

更に、上乗せ要件を満たすと、

前年比給与増加額 × 25%

と、かなり高額の控除額となっています。(別途上限あり

例えば、前年比500万円給与支給額が増加したとすると、最大125万円法人税の負担が減ります。
控除率25%、税率30%だと考えると、416万円分の経費(損金)による法人税の負担減少と同じ効果です。
つまり、(法人税だけ考えれば…)416万円分の経費が、500万円の給与増加でプラスされることになります。

したがって、企業が賃上げを行うことに対してインセンティブが働き、
個人の所得が増加することを狙った政策ということです。


所得拡大促進税制の要件

共通の要件

適用要件としてはいくつも、また詳細に定められていますので、よく確認してください。
ポイントのみ概説すると

・中小企業であること(中小企業向けの税制の場合は)
・青色申告をしていること
・役員以外の給与で判定すること
などが挙げられます。

そのほか、決算期によって変わる要件が次の通りありますので、要注意です。

 

令和3年12月末決算の場合…

①従業員給与が前年より増加していること

②前年と今年でずっと雇っている人の給与が、1.5%以上増加していること

③上乗せ要件:②が2.5%以上増加&教育訓練費が10%以上増加していること
(or経営力向上計画の要件)

令和4年3月末決算の場合…

①従業員給与が、前年比1.5%以上増加していること

②上乗せ要件:①が2.5%以上増加していること&教育訓練費が10%以上増加していること
(or経営力向上計画の要件)


令和3年12月末決算と令和4年3月末決算での違いは

要件は複雑に見えますが、要するに前年より1.5%以上給与が増えていることが重要です。
また、上乗せ要件を満たすには、教育訓練費を10%以上増加していることが重要です。

何が違うかというと、比べるときの給与の対象者が、次のようになっていることです。
・令和3年12月末決算法人の場合…前年と今年ずっといる人の給与
・令和4年3月末決算法人の場合…(単純に)従業員の給与


3月決算はまだ間に合う!やっといたほうがいいこと!

以上が制度の概要になりますが、ぜひ検討していただきたいことがあります。

それは、

教育訓練費を支出すること

です。
同制度が適用される可能性のある会社=業績が向上していて、人が増えているor給与が増えている
という構図があると思います。
そのような会社の場合には、当然人の果たす役割の割合や、期待されるスキルの増加、向上が求められます。
そのタイミングで、そのように業務に必要なスキルを学ぶ、身に着けるための研修費用を法人が負担します。
そうすると、その人、会社の業績、そして同制度の上乗せ要件を満たす可能性が増し、
かなりのメリットが期待できます。

対象となる教育訓練費は、かなり幅広く認められる可能性がありますので、
是非ご検討ください。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか。
人への投資により、かなり大きな税効果を生む所得拡大促進税制。
毎年社会の状況に応じて変化するので微妙な判断は難しいですが、
大きな効果がありますので、ぜひぜひご検討ください。

なお、今回はポイント解説のため、詳細な要件は必ず自社と顧問税理士等とご相談して、
適用の有無等を判断してください。