令和3年分の確定申告も段々と目前に迫ってまいりました。
今回は、確定申告で必要になる譲渡所得に関する知識を提供したいと思います。

結論から言えば「取得のためなら原価、譲渡のためなら費用、貸付のためなら経費」と理解しておけば

・譲渡…譲渡の場合の経費や原価になるものとは?
・原価…測量費が取得費とされる場合は?
・経費…測量費が経費となる場合は?
・相続…概算取得費を使った場合?

譲渡…譲渡の場合の経費や原価になるものとは?

不動産(土地や建物)を譲渡し、利益が出ると所得税等が課税されます。
この場合の利益は、

譲渡対価 - (取得費 + 譲渡費用)

で計算されます。

譲渡対価=売値、取得費=基本的に買値ということはわかりますが、
譲渡費用とは何でしょうか?

譲渡費用とは?

所得税法基本通達では、譲渡費用の範囲を
①資産の譲渡に際して支出した仲介手数料、運搬費、登記若しくは登録に要する費用
その他当該譲渡のために直接要した費用 
②借家人等を立ち退かせるための立退料、土地の上にある建物等の取壊費用、
既に売買契約を締結したが更に有利な条件で他に譲渡するため当該契約を解除した際生じる違約金、
その他譲渡価額を増加させるため当該譲渡に際して支出した費用
としていて、測量費に関してははっきりとは書いていません。
タックスアンサーNo.3252 取得費となるもの参照)

測量費は譲渡費用になるか?

では測量費はどうなるかというと、「譲渡のための測量か」という問題になります。
例えば、売却契約を結ぶにあたって面積を明確に算出するために測量が必要になれば
譲渡費用に該当すると考えられます。
一方で、「いつか売却するだろうから隣地との境を明確にしておこう」と素晴らしい発想で事前に準備していた場合には、
譲渡費用には該当しないと考えられるため要注意です。

・原価…測量費が取得費とされる場合は?

また、譲渡の場合の取得費に該当する場合があります。
それは、「土地の取得に際して支払った場合」、つまり上記の譲渡の場合の買い手のような立場で、
測量費を買い手が負担するときなどが該当します。
この場合には、取得費(買値)に測量費を含めます。

将来その土地を売却する際には、土地本体の買値だけでなくこの測量費も取得費に含めることになるので、
測量費の領収書などを保管しておくことも重要です。

・経費…測量費が経費となる場合は?

さらに、測量費が経費(必要経費)に該当する場合もあります。
それは、賃貸不動産に関して支出した場合です・

不動産所得の必要経費は、保有期間中の修繕費や固定資産税などが該当します。
例えば保有期間中に隣地とのトラブル予防のためや、価値を上げて賃料につなげるために面積を明確にするために
測量した場合には、その測量費は必要経費とされると考えられます。


・相続…概算取得費を使った場合?

最後に、相続で取得した土地に関する論点です。
相続で取得した土地を譲渡する際、土地の取得価額がわからないことが多々あります。
そんなときのために、”概算取得費”が認められています。
概算取得費とは、土地譲渡代金の5%相当額を取得費として、譲渡所得の計算をする制度です。

ただ、測量費がある場合にはこの概算取得費に関して要注意です。
取得価額はわからないが、取得に際した測量費がある場合で、概算取得費を利用するときは、
その測量費は取得費は加味できません(概算取得費に含まれるので)。

 

まとめ

いかがでしたでしょうか?
不動産の譲渡は確定申告の中でも非常に難しい論点です。
上記のような原則があっても、「事実は小説より奇なり」。
現実には様々な複雑な要素や資料、事情があります。
資料がそろっている確信があれば、ご自身で確定申告を行うのもよし、税務署でアドバイスを受けながら確定申告をするのもよしです。
もしわからない、不安、お任せいしたいということであれば税理士に相談しながら進めるのが吉です。

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