銀行業界は苦しい状況にあります。

しかし、考えてみれば、銀行の苦境は今に始まったことではありません。
バブル崩壊に伴う不良債権の増大もかなりの衝撃でしたが、そうしたことを乗り越えて、現在に至っています。
それでは、今回も従来と同様に問題を解決できるのでしょうか。

ところが、今回はそうは簡単ではないと思います。というのは、今回の危機はこれまでとその本質が異なるからです。
従来の銀行問題は主として不良債権でした。つまり、貸借対照表(B/S)の資産の劣化が問題でした。

ところが、今、問われているのは損益計算書(P/L)の利ザヤだからです。

銀行の主たる資産は貸付金です。

貸付先が業況不振になると、貸付金の回収不能の可能性が高くなり、貸倒引当金の繰り入れや、最悪の場合、貸倒損失を計上しなければなりません。

これまで銀行に生じた経営問題は主としてこのパターンでした。
確かにこれは重大事ですが、この問題の解決法はそれほど難しくありません。

なぜなら、B/Sに発生する不良債権を処理さえすればいいからです。
不良債権を処理すれば、当然損失が発生します。
ポイントは銀行にその損失処理を許容できる自己資本の厚さがあるかどうかという点にあります。
損失処理を行い、自己資本が足りなくなれば、銀行の破綻につながりますし、あるいは、破綻させると社会的影響が大きすぎるということであれば、
公的資金などの外部資本を注入し、自己資本を増強するという解決手法をとります。
だからこそ、銀行にとっては自己資本比率が重要な指標として常に注目されていました。

これはこれで大変ですが、過去の経験があり問題の所在と解決方法が明快であることが救いです。

今、銀行に問われているのは、B/Sではなく、損益計算書(P/L)の利益低下です。

その一つの要因に日銀のマイナス金利政策があることは事実ですが、日銀が政策変更をすれば、すべてが解決するというような生易しいものではありません。

その背景にはカネ余りと、その一方で止まらない資金需要減少に伴う金利低下による利ザヤ縮小という構造的問題が横たわっているからです。

預貸金利ザヤで儲けるというのは銀行の変わることのない伝統的な本来業務です。
つまり、P/Lの問題とは銀行のビジネスモデルの根本的変革を要求しているのです。
銀行はこれまで基本とするビジネスモデルの変革など問われたことがなく、P/Lの問題は過去に経験のない、共通する処方箋のない問題だということができます。
新しいビジネスモデルを提示できなければ、統合や人員削減といったリストラしか残された道はありません。

B/Sの不良債権問題は過去の遺産の処理で、一過性の問題であるのに対し、P/Lの利ザヤ縮小は将来に向けて継続する問題です。
それだけに解決は容易ではありません。

さらに問題を難しくしているのは、B/Sの問題からも完全に解き放たれているわけではないということです。
現在は、景気がいいので沈静化していますが、景気が悪化すれば不良債権問題は必ず表面化します。そのときP/Lの問題を解決できていないと大変です。

銀行の経営者はそれまでに市場が納得できる処方箋を提示することを求められますが、残された時間はそう多くはないでしょう。(了)
(記事提供者:(株)日本ビジネスプラン)