連結納税制度は、グループ企業間での税務処理を合理化するための重要なメカニズムです。この記事では、連結納税制度を利用する企業やその経験者が最新の税法改正にどのように適応すべきかを解説します。

最新の税法改正の概要

最近の税法改正は、デジタル化や国際税務の複雑化に対応する内容が中心です。具体的には、デジタルサービスに対する課税、国際的な税務透明性の強化、移転価格税制の変更などがあります。これらの変更は、連結納税制度を利用する企業に新たな課題とチャンスをもたらしています。

連結納税制度の最適化

連結納税制度を最適に利用するためには、以下のポイントに注意する必要があります。

  1. データとレポーティングの精度:正確なデータ管理と透明なレポーティングは、税務調査やリスク管理において不可欠です。
  2. 国際税務の遵守:グローバルな事業展開をしている企業は、国際税務の変更に迅速に対応する必要があります。
  3. 移転価格の管理:移転価格政策の見直しと適切な文書化が重要です。

実践的アドバイス

連結納税制度の変更に対応するための実践的なアドバイスを提供します。特に、税務計画の見直しや内部管理システムの強化が推奨されます。

まとめ

最新の税法改正は、連結納税制度を利用する企業にとって重要な意味を持ちます。これらの変更に適応するためには、税理士や専門家と連携し、柔軟かつ先見的なアプローチが求められます。

2022年の税制改正において、ひっそりと厳しい規定が追加されました。

その内容と影響、具体例、注意点をご紹介します。

・改正となった【簿外経費の否認】
・簿外経費否認の具体例
・全員要注意!他の注意点

 

改正で追加された【簿外経費の否認】とは

・対象税目:所得税と法人税
・対象者:事実の隠蔽や仮装がある、または、無申告の納税者(個人、法人)
・いつから:令和5年分から(法人の場合は令和5年以降に開始する事業年度から)

平たくいえば、
「申告していない、申告していても隠したり偽ったりしているような人(会社)が、
後から主張する経費は認めない」
という内容です。

そのような納税者の税務調査において、後から経費を主張され、
その精査に膨大な徴税コストがかかってしまうことがあったことが背景。
つまり、元々きちんと納税していなかった人や会社について、
さらに国民の税金を使ってまで対応していられない、ということです。

簿外経費否認の具体例は?

例えば、無申告の会社に対して税務調査が来ます。
税務調査において、「所得1千万円あります!」と指摘。
それに対して、会社は「いや、帳簿に記載漏れていたが、これも経費です」
と多数のレシート、領収書などを出してきたとします。

従来はこのレシートや領収書が経費であることを調査しなくてはならず、
しかも、元々申告をしないような会社の事実を探ることは大変なことです。
ここに多大なヒトや時間がかかっていました。

これについて、「損金や必要経費として認めません」となりました。

全員要注意!他の注意点

ここまで読むと「確かにけしからん!真面目に申告している私たちには関係がない」と思えます。

「隠蔽・仮装」というのは、非常に重い脱税行為として、厳しく罰せられますが、
これに該当するのは相当悪質であることが常でした。

そこで注意すべきことがあります。

税務調査においては、「質疑応答記録書」や「念書」のようなものに一筆を書かされることがあります。
実際に弊所でも経験があり、裁判例などでも登場するこれらの書類の「読み方」「書きぶり」によっては、
あとから「仮装・隠ぺいしたと当人が認めている」とされてしまうことがあります。
(税務調査や租税法に関する書籍、判例で確認できます)

つまり、「隠ぺい、仮装、無申告」といったものは関係ないと思っていた自分が、
急にその対象となり、今回の改正の対象となりうる点によく気をつけましょう。

具体的には、税理士や税理士登録している弁護士に税務調査の同席を頼むこと。
そのためには、事前に顧問契約して会社の状況をしっかり理解しておいていただくことが重要です。

(参考:税制改正の概要:財務省HP/エヌピー通信社月間所長のミカタ2022年5月号ほか)

【住民税と所得税】株式関係で異なる課税方式の選択

において、

・所得税は分離課税で申告を、住民税では申告不要を選択することにより、
納税者に有利な確定申告をすることができる
・令和3年分からは、確定申告書の一部に〇を付けるだけでそれが可能になる

という内容をお伝えしましたが、なんと改正が入る予定です。

・もともとどういう制度だったか?
・改正内容の詳細
・改正の影響

もともとどういう制度だったか?

まず、一般的に投資可能な上場株式などの配当所得や譲渡所得については、
証券会社において「源泉徴収ありの特定口座」を選択することによって、
所得税も住民税も確定申告しなくても済む仕組みになっています。

これについて、申告不要であってもあえて確定申告することによって、
ほかの所得と通算(相殺)させることによって、
全体の税金を減らす、という方法があります。

この方法について「所得税は確定申告するが、住民税はしない」ことができるかできないか、
長らくはっきりしていませんでした。
この点、直近においてできることが明確にされました。

しかも、多少自治体によって対応は異なるものの、
「所得税の確定申告書の住民税に関する欄に〇を付ける付けない」という
単純な方法でよいこととされました。

 

改正内容の詳細

令和4年度の税制改正においては、
2024年度分からは別々の課税方式を選ぶことができなくなりました。

 

改正の影響

元々の制度の下では、例えば、一定範囲(大部分が該当します)の年収の方が、
・所得税では配当所得を申告して、配当控除を行う
・住民税では申告不要制度を利用して、源泉所得税のみで完結する
という方法を採ると税負担が軽くなることがありました。
これができなくなります。

更に、住民税において申告不要を選択しない場合には、
各種社会保険料にも影響が出ます。

したがって、今後は、その方の年収、所得控除などを加味したうえで、
・所得税率(15.315%累進税率)
・配当控除額(配当の12.8%)
・住民税率(5%or10%)
・社会保険料への影響額
をすべて加味して、有利な申告を選択することになるでしょう。

税金

”副業”といえば、
・本業が別にある人のちょっとした収入
・20万円/年を超えなければ確定申告の必要がない
・確定申告するとしても利益を載せるだけ
といったことを思い浮かべる方も多くいると思います。

近年はシェアリングエコノミーや副業のしやすさなどから、
本業や勤め先以外での収入がある(多い)方も増えてきています。
国税もこの点を看過せず、厳しい改正を加えてきています。

今回はこの副業=雑所得について、令和4年(2022年)からの要注意改正点をご紹介します。

・そもそも副業はどう取り扱うか
・雑所得の確定申告
・改正点

 

そもそも副業はどう取り扱うか

そもそも副業による収入や所得は、所得税の確定申告においては、雑所得に区分されます。
雑所得の判断は単純明快とはいきませんが、基本的には、
他にお勤めがある方や収入が圧倒的に多い本業がある方が行う、
それ以外の収入は雑所得だと考えてもいいと思います。

雑所得の確定申告

雑所得がある場合で確定申告する場合には、これまで基本的には雑所得の金額(利益)を記載するだけでした。

雑所得の金額は他の給与や事業の所得と合算されて、累進課税方式によって税がかかります。

なお、給与所得があって、副業収入(雑所得)などが20万円以下の方は確定申告をしなくていい
事になっています。
但し、医療費控除などで確定申告を行う場合には、その金額の多寡にかかわらず雑所得を申告します。
※厳密な判定が必要になりますので、実際には税理士や税務署にご確認ください。

また、確定申告等に際しては、その根拠となる書類の保存などは特に定められていませんでした。

改正点

この雑所得について、厳しくなる方向で改正が行われています。

①現金基準での計算
基本的には発生主義といわれる基準で計算するのが原則ですが、
雑所得については、実際に入出金があった日をもって計算してもいいことになっています。

この点について、「前々年の収入が300万円以下の人」に限られることになりました。

②収支内訳書
雑所得については上記の通り簡単な内容での確定申告ができましたが、
「前々年の収入が1,000万円超の人」は、収支内訳書を添付しないといけなくなりました。

③書類の保存義務
これまで特に義務がなかった書類の保存も義務化されました。
具体的には「前々年の収入が300万円を超える人」は、
「現金預金取引等関係書類」を5年間保存しないといけなくなりました。

※現金預金取引等関係書類とは、
居住者等が上記の業務に関して作成し、または受領した請求書、
領収書その他これらに類する書類(自己の作成したこれらの書類でその写しのあるものは、その写しを含みます。)
のうち、現金の収受もしくは払出しまたは預貯金の預入もしくは引出しに際して作成されたものをいいます。
→つまり、「入出金の根拠になる書類」です。

確定申告

財産債務調書及び国外財産調書は一定の財産を持つ人が提出しなければならない書類です。
この財産債務調書と国外財産調書について、基本からご紹介するとともに、
令和4年からの改正点を見ていきましょう。

 

・財産債務調書とは
・国外財産調書とは
・それぞれのペナルティやメリットは?
・財産債務調書と国外財産調書の改正点は?

 

財産債務調書とは

財産債務調書とは、国税庁の説明を引用すると…
「所得税等の確定申告書を提出しなければならない方又は所得税の還付申告書
(その年分の所得税の額の合計額が配当控除額及び
年末調整で適用を受けた住宅借入金等特別控除額の合計額を超える場合におけるその還付申告書に限ります。)
を提出することができる方で、
その年分の退職所得を除く各種所得金額の合計額(注1)が2,000万円を超え、かつ、
その年の12月31日において、その価額の合計額が3億円以上の財産又はその価額の合計額が1億円以上の
国外転出特例対象財産を有する方は、その財産の種類、数量及び価格並びに
債務の金額その他必要な事項を記載した財産債務調書を、その年の翌年の3月15日までに
所得税の納税地の所轄税務署に提出しなければなりません。
なお、財産債務調書の提出に当たっては、別途「財産債務調書合計表」を作成し、
添付する必要があります。」
(国税庁「財産債務調書制度のあらまし」パンフレットより引用)

ということですが、財産債務調書の内容を簡単に説明すると下記のようなものです。
・対象者
確定申告を行う人で、合計の所得金額が2千万円を超えていて、
12/31時点で財産が3億円以上あるor有価証券が1億円以上ある人
・記載する内容
その持っている財産の内容、量、金額や、債務の金額など
・いつどこに提出する?
確定申告と同じで、翌年3/15に確定申告書を提出する先の税務署に

 

要するに「収入も財産もかなり多い人」が「持っている財産の内容を申告する」モノです。

 

国外財産調書とは

財産債務調書とは、国税庁の説明を引用すると…
「居住者(「非永住者の方を除きます。」の方で、その年の12月31日において、
その価額の合計額が5,000万円を超える国外財産を有する方は、
その財産の種類、数量及び価額その他必要な事項を記載した国外財産調書を、
その年の翌年の3月15日までに、住所地等の所轄の税務署長に提出しなければなりません。
なお、国外財産調書の提出に当たっては、別途「国外財産調書合計表」を作成し、添付する必要があります。
(国税庁「国外財産調書制度のあらまし」パンフレットより引用)

ということですが、国外財産調書の内容を簡単に説明すると下記のようなものです。
・対象者
12/31時点で、海外に持っている財産が3億円以上ある人
・記載する内容
その持っている財産の内容、量、金額や、債務の金額など
・いつどこに提出する?
確定申告と同じで、翌年3/15に住所地などを管轄する税務署に

要するに「海外にかなり財産を持っている人」が「持っている海外の財産の内容を申告する」モノです。

 

それぞれのペナルティやメリットは?

どちらの書類も「提出しなければならない(義務)」ですので、提出しない場合にはペナルティがあります。
また、ペナルティだけではなく、提出を促す目的でインセンティブも設けられています。

ペナルティ
・対象
期限までに提出しなかった場合、提出したが内容に漏れや重要な不備があった場合で、
その財産に係る所得税や相続税の申告漏れがあるとき
・内容
過少申告加算税が5%増える

また、国外財産調書については、次のようにより厳しい内容になっています。
・修正申告等の場合に求められる国外財産に関する書類を期限までに提出しないと、
下記インセンティブはなく、上記ペナルティはさらに5%増える
・偽りの記載、正当な理由なく提出しないと、1年以内の懲役または50万円以下の罰金に処される可能性

インセンティブ

それぞれの調書に記載した財産にかかる申告漏れがあっても過少申告加算税が5%軽減される。

 

財産債務調書と国外財産調書の改正点は?

これら2つの制度について、令和4年の税制改正で次のような改正が入ります。

(1)財産債務調書の提出義務者の見直し
現行の財産債務調書の提出義務者のほか、
その年の12月31日において有する財産の価額の合計額が10億円以上である居住者を提出義務者とする。
(注)上記の改正は、令和5年分以後の財産債務調書について適用する。

つまり、所得がなくても財産が非常に大きい場合には提出することになります。

(2)財産債務調書等の提出期限の見直し
財産債務調書の提出期限について、
その年の翌年の6月30日(現行:その年の翌年の3月15日)とする(国外財産調書についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、令和5年分以後の財産債務調書又は国外財産調書について適用する。

提出期限が長くなります!

(3)提出期限後に財産債務調書等が提出された場合の宥恕措置の見直し
提出期限後に財産債務調書が提出された場合において、その提出が、
調査があったことにより更正又は決定があるべきことを予知してされたものでないときは、
その財産債務調書は提出期限内に提出されたものとみなす措置について、
その提出が調査通知前にされたものである場合に限り適用することとする(国外財産調書についても同様とする。)。
(注)上記の改正は、財産債務調書又は国外財産調書が令和6年1月1日以後に提出される場合について適用する。

提出期限内に提出したとみなす措置が厳しくなります。

(4)財産債務調書等の記載事項の見直し
財産債務調書への記載を運用上省略することができる「その他の動産の区分に該当する家庭用動産」の取得価額の基準を
300万円未満(現行:100万円未満)に引き上げるほか、財産債務調書及び国外財産調書の記載事項について運用上の見直しを行う。
(注)上記の改正は、令和5年分以後の財産債務調書又は国外財産調書について適用する。

(5)その他所要の措置を講ずる

ふるさと納税は、制度ができあがってから時間も経ち、多くのCMや地方のアピール、ニュースなどの報道なども増え、
認知度もかなり高く、ふるさと納税をしたことがある人もかなり増えたようです。

今年も確定申告のシーズンが近づいてきましたので、今回はこのトピックについてご紹介したいと思います。
税理士・会計事務所に依頼する方もご自身で確定申告される方も、知っておくと便利だと思います。

結論から言えば、「ふるさと納税のサイトで発行される証明書だけで確定申告に使える」ことになります。

 

ふるさと納税の手続きが簡単になる?!

2021年分の確定申告から、ふるさと納税の申告手続きが簡単になるということですが、
どういった内容かというと、ポイントは次の通りです。

・この制度を使えば、いままでの「寄付金の受領書」の添付が不要
・代わりに各サイトで取得できる「寄付金控除に関する証明書」を添付すればOK
申告の方法は、3つ(詳しくは下部をご確認ください)
①「寄付金控除に関する証明書」を税理士や会計事務所に提出して確定申告してもらう
②「寄付金控除に関する証明書」を添付して自身の確定申告書を添付して確定申告
③「寄付金控除に関する証明書」をe-taxで添付

詳しく…

これまで、ふるさと納税で寄附金控除の適用を受けるためには、
確定申告書に特定寄附金の受領者が発行する寄附ごとの「寄附金の受領書」の添付が必要でした。
各サイトの対応時期は要確認!

この寄附ごとの「寄附金の受領書」は、寄付先が多ければ多いほど、寄付回数が多ければ多いほど多くなり、
人によっては何十枚となることもありました。
2021年分からは特定事業者が発行する年間寄附額を記載した「寄附金控除に関する証明書」を添付することで済むようになります。
(詳しくは国税庁HPへ)

特定事業者とは?

寄附金控除に関する証明書を発行することのできる特定事業者とは
”地方公共団体と特定寄附金の仲介に関する契約を締結している者”で、
”特定寄附金が支出された事実を適正かつ確実に管理することができると認められるものとして国税庁長官が指定した者”
とされており、例えば「ふるさとチョイス」、「ふるなび」、「さとふる」、「楽天ふるさと納税」など
つまり、一般的にふるさと納税を行おうと思ったときに利用するサイトは概ね特定事業者なので、
各サイトからダウンロード等すればOKということになります!

ちなみに、「寄付金控除に関する証明書」には、以下の事項が記載されています。

①寄附者の氏名、住所
②その年中の寄附者の寄附総額
③特定事業者が寄附を管理している番号
④寄附年月日
⑤寄附先の名称及び法人番号
⑥その他参考となるべき事項が記載されます。

確定申告の申告方法は、3つあります!

①特定事業者のポータルサイトからダウンロードした証明書データをe-Taxを活用して確定申告書に添付して送信
②特定事業者のポータルサイトからダウンロードした証明書データを国税庁が提供するQRコード付証明書等作成システムで読み込み、
これをプリントアウトした書類を確定申告書に添付して申告
③郵送で交付を受けた証明書を確定申告書に添付して申告

ワンストップ特例はどうなった?

住民税の控除が非常に簡単に済む「ワンストップ特例制度」には変更はありません。
※ワンストップ特例制度とは、確定申告を行わなくても、
1年間で5つの自治体であれば、ふるさと納税の寄付金控除を受けられる仕組みをいいます。

ただし、寄付額が多いと控除しきれない部分もでてきますので、今回のこの制度のほうが使い勝手がよさそうです。

(注意)
 上記の記載内容は、令和3年11月8日現在の情報に基づいて記載しております。
 今後の動向によっては、税制、関係法令等、税務の取扱い等が変わる可能性が十分ありますので、記載の内容・数値等は将来にわたって保証されるものではありません。

令和3年8月2日に施行された「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」
税制ではありますが、国税庁ではなく、中小企業庁が主導しています。

今回はこの「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」について、
そのうちの「準備金の積み立て」に関して、以下のポイントを解説します。
「経営資源集約化税制(中小企業事業再編投資損失準備金)」内容
・制度の目的
・適用後の注意点

中小企業事業再編投資損失準備金制度の内容

同制度の内容を一言でいえば、「認定を受けたならば設備投資、雇用、M&Aに関して優遇する」というもの。

その中の、M&A(準備金の積み立て)に関して言えば、
M&Aによって取得した株式の70%を損金に算入することができる」制度です。

詳細は…

認定計画を受けるほかにも要件があります。

期間:令和6年3月31日までに
要件1:株式取得によってM&Aを実施する場合(取得価額10億円以下に限る)に、
・要件2:株式等の取得価額として計上する金額(取得価額、手数料等)の70%以下の金額を準備金として積み立てた時は、
・その事業年度において損金算入される、
というものです。

制度の目的は?

この制度の趣旨として、
「その株式等の価格の低落による損失に備えるため」と税制改正大綱にあります。
また、財務省の税制改正パンフレットには、
M&A実施後に発生する中小企業の特有のリスク(簿外債務、偶発債務等)に備える観点から」とあります。
さらに、「税制改正の解説」でも、
中小企業M&A市場の未成熟さや費用負担の困難性が生む投資リスクに備える為の支援措置だ、としています。

つまり、中小企業のM&Aのハードルを下げるための制度といえます。

 

注意点-益金算入やそのほかの落とし穴…

この制度にはもちろん注意点もあります。

まずは要件にもなっている認定計画を受けること。
認定計画は
「人材育成、コスト管理等のマネジメントの向上や設備投資など、自社の経営力を向上するために実施する計画」
とあります。

 

次に、この準備金、積み立て後5年を経過した事業年度以降5年間で準備金残高の均等額を取り崩して、
益金算入する点も理解しておく必要があります。

つまり、基本的には課税の繰り延べといえるかもしれません。

 

他にも落とし穴として、次のような場合には制度の準備金の取り消しがおきますので要注意です。
経営力向上計画の認定取消し
・本税制対象子会社の解散・合併消滅
・その株式の帳簿価額の減額(評価減や資本剰余金分配など)
・その株式の譲渡
青色申告の取消

投資リスクは下がってもこのように税務リスクとは付き合っていかないといけなくなりますので、
うまく活用してきたいところです。

民法改正により特別寄与料が変わった!

相続人以外の者は、遺産分割協議には入れませんし、
いくら相続人以外の人が、被相続人の療養看護に努めても経済的な保障はありませんでした。

つまり、例えば長男の嫁が義理の父の面倒をいくら見ても、1円ももらえないことがありました。

しかし、令和元年7月から民法改正により、相続人以外の親族の「特別の寄与」が
制度として確立され、特別寄与料の請求が認められるようになりました

これによって、例えば上述の長男の嫁が療養看護を行っていた場合などに対して、
法律的にもが整備されたといえます。

 

 

療養看護による特別の寄与とは?

「特別の寄与」の制度の意味

被相続人の親族(相続人以外)で
無償により被相続人の療養看護その他の労務を提供し、
被相続人の財産の維持・増加に特別の寄与をした者が、
相続人に対し、寄与に応じた額の金銭の支払を請求できるもの

つまり、被相続人や被相続人の財産を守ったりするお手伝いを一生懸命やった方が、お金をもらえる、
ということだといえます。

特別の寄与の請求はいつする?

相続人との間で協議が整わない場合、家庭裁判所に協議に代わる処分を請求できます。
相続の開始及び相続人を知った時から6か月以内、または相続開始から1年以内に限られます。

特別の寄与の金額は?

といっても、これまでの家庭裁判所の審判によって特別寄与料としてされた評価は、
介護サービス報酬の単価に介護日数を乗じ、寄与の態様に応じた裁量割合を考慮して算定。
その評価額は数百万円程度です。
内閣府の統計調査(2016年)でも専業主婦による家事活動の評価額を年間で約300万円としています。

特別寄与料は、みなし遺贈として課税されるので相続税に注意

特別寄与料の課税上の扱いは、
被相続人から遺贈により取得したものとみなして相続税が課税されます。

長男の嫁の場合、被相続人の一親等の血族及び配偶者ではないため、
相続税額は2割加算となり、特別寄与料の確定を知った日の翌日から10か月以内に、
相続税申告書の提出が必要です。

特別寄与料を払う側は債務控除になって相続税が軽減

一方、特別寄与料を負担する相続人は、特別寄与料の負担分を債務として控除できます。
つまりその分相続税が少なくなることになります。
また、既に相続税の申告書を提出していたときは、更正の請求をして、
債務控除後の金額での申告をやり直し、還付を受けることができたりします。

特別の寄与を認めてもらうためには?

法律で手当てがなされたといっても、証明できなければ難しいことにかわりはありません。

つまり、例えば長男の嫁が義理の父の介護にどれだけ努めていたかは、
家庭内で被相続人の療養看護によって財産の維持・増加に努めた行動記録を残しておくことが肝要です。

特別の寄与以外での報いる方法

また、特別寄与者は被相続人の心のケアを担う反面、様々なストレスも負っていることでしょう。
それに報いるためには、遺贈を選択することもできます

もちろん、法律も改正でサポートしていますが、
一番大切なのは感謝や尊敬など、ということは変わらないと思います。

 

 

働き方改革が叫ばれて久しく、大企業でも副業・兼業を許容、推進する会社が登場しています。
そこで、雇用する側として気になることの一つが、労働時間の管理です。

今回は、副業・兼業における労働時間の管理・時間外労働について紹介します。

結論から言えば、「副業・兼業の時間も含めて労働管理、時間外労働の計算が必要」だということです。

・国も副業・兼業を認めてる?
・データでみる副業や兼業の増加
・そもそも基本的に労働時間で気を付けるべき点は?
・副業や兼業に関連して気を付けるべき点は?

 

国も副業・兼業を認めてる?

厚生労働省が発表している「モデル就業規則」では、
2018年1月以降、「副業・兼業」という章を追加しています。
そこでは、副業・兼業を原則容認する内容に変更しています。

データでみる副業や兼業の増加

厚生労働省によれば、次のように副業に関するデータが発表されています。

副業を希望する雇用者数(雇用者に占める割合)

1992年の235万人(4.5%)から2017年385万人(6.5%)

副業雇用者数

1992年の76万人から2017年には129万人へ増えています

そもそも基本的に労働時間で気を付けるべき点は?

中小企業には2020年4月から、大企業には2019年4月から、
時間外労働の上限規制(罰則あり)が適用されています。

その内容は以下の通りです。
・36協定による原則の上限時間(月45時間、年360時間)を超えることはできない
・ただし、36協定で特別条項を締結することができる
・特別条項によって、月100時間未満、2~6月平均80時間以下、年720時間以下までの時間外労働が認められる。

副業や兼業に関連して気を付けるべき点は?

さて、ここで問題となるのは、この時間の数え方です。
労働基準法38条1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、(中略)通算する」とあります。

つまり、事業主(会社)が異なる場合でも通算されます。

例えば…副業・兼業での労働時間管理

例えば、A社(1日5時間、残業なし)で雇用されている労働者が、
新たにB社(1日3時間&残業2時間)で雇用された場合、
1日のうち、B社で勤務後にA社で勤務したとしても、
後で雇用契約を結んだB社の2時間が時間外労働となります。

なお、副業・兼業開始前に両社の合計所定労働時間を法定内で設定する「管理モデル」を導入した場合は、
法定労働時間を超えた時間に働いている会社で割増賃金が発生することになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
副業・兼業を認めている場合、既に副業・兼業をしている方を雇用する場合には、
要注意です。

なお、もちろん今回の話は、労働基準法上の労働者でない場合(フリー、独立・起業、共同経営など)や、
労働時間規制が適用されない場合(農業・畜産業・水産業、管理監督者など)は、関係ありません。

相続における土地の登記制度の改正

Pision合同会計事務所でも相続税のご相談、ご依頼を多数受けておりますが、
その相続における問題の一つが、
所有者がわからない、連絡がつかない所有者不明土地
です。
相続や不動産の実務に携わっていると、意外とこの所有者不明土地が多いことに驚きます。
この問題に関して、法律の改正をポイント解説したいと思います。

・不動産登記制度の厳格化
・不動産登記制度の緩和
・不動産を国が買い取る?相続土地国庫帰属制度
・民法の見直し

結論から言えば、「厳格化の面も、緩和された面も、利便性向上した面もある改正」となっています。

不動産登記制度の厳格化

まずは、相続登記が義務化されました。
過去においては、相続登記をしなくても罰則はありませんでしたが、これが変わりました。

相続によって不動産を取得した者は、
その取得を知った日から3年以内に相続登記を申請しないと10万円以下の過料(罰金)がかかります。

不動産登記制度の緩和

一方で、相続登記に関して緩和もされました。
これまで共有の場合などには共同して申請しなければならなかった登記申請について、
自らを登記名義人の法定相続人であることを申し出れば、
単独で登記申請できる「相続人申告登記が新設されました。
これで登記申請義務を履行したものとみなされます。

登録免許税も軽くなる方向です。

不動産を国が買い取る?”相続土地国庫帰属制度”

さらに、国が土地を買い取る制度もあります。
ただし、ハードルは相当高いです。

建物は相続人が取り壊して更地にする、土壌汚染や埋設物のある土地、崖地、担保権の設定された土地、
通路に利用される土地、境界に争いのある土地などは、買取りの対象からはずされています。

しかも、買い取る場合でも10年分の管理費用を国に支払うことが条件となるなど、
なかなか利用は難しそうです。
相続税の物納や寄付もハードルは高いですので、似たような感じです。

民法の見直し

民法も変わっています。
遺産分割協議の長期未了状態を解消するため、
相続開始から10年経過したときは、特別受益者の相続分や寄与分によらず、
画一的な法定相続分で遺産分割することとなりました。

さらに、新たな管理制度が創設され、選任された管理人が当該土地の管理や売却できるようになりました。
また、所有者不明土地を電気などのライフライン確保に利用できるようになりました。

◆相続で所有者不明土地にしないために

親世帯と同居することが少なくなり、相続が起きると土地や建物の利用目的が失われ、
維持コストの負担も重くなります。
行き場のない不動産としないためにも親の世代が将来の活用や処分に責任をもって臨むことが必要な時代になったと言えそうです。

倒産