導入

IT企業においては、優れた人材の採用と適切な報酬計画の策定が業績向上と競争力維持のために不可欠です。しかし、人材採用と報酬計画には税務上の考慮事項が存在し、適切な対応が求められます。この記事では、IT企業が人材採用と報酬計画を進める上での税務上のポイントと考慮事項について解説します。

人材採用の税務上の考慮事項

  1. 1.雇用形態と税務手続き

  2. 正社員、契約社員、業務委託などの雇用形態によって税務手続きが異なるため、適切な雇用形態の選択と税務手続きの遵守が重要です。雇用形態によっては、源泉徴収税や社会保険料の計算や申告、支払いが必要となりますので、税務制度を理解し、適切な手続きを行いましょう。

  3. 2.給与体系と報酬パッケージ

  4. 報酬体系や報酬パッケージの構築には、税務面での効果的な考慮が必要です。報酬の種類や構成要素、ボーナス制度などを適切に設計し、税務上のメリットを最大化しましょう。税務法の規定に基づき、報酬の源泉徴収や年末調整などの手続きも正確に行いましょう。

報酬計画の税務上の考慮事項

  1. 1.税務優遇制度の活用

  2. IT企業には、特定の税制優遇制度が存在する場合があります。例えば、研究開発税制や新事業創造投資税制などがありますので、これらの制度を活用して報酬計画を立案しましょう。税務専門家や税理士のアドバイスを受けながら、最適な税務優遇制度を選定し、報酬計画に反映させましょう。

  3. 2.従業員持ち株制度

  4. 従業員持ち株制度の導入は、従業員のモチベーション向上や長期的な人材の確保に効果的です。税務上の観点では、従業員持ち株制度が適用される場合には、税務処理や申告手続きが必要ですので、正確に対応しましょう。

まとめ

IT企業において人材採用と報酬計画は重要な課題ですが、税務上の考慮事項を適切に理解し対応することも同様に重要です。適切な雇用形態の選択や税務手続き、報酬体系の構築や税務優遇制度の活用、従業員持ち株制度の導入など、税務上のポイントを押さえながら人材採用と報酬計画を進めましょう。税務専門家や税理士との協力も有効です。適切な税務対応を行いながら、優れた人材を確保し、持続的な成長を遂げることができるでしょう。

様々な理由から広がり、定着しつつあるテレワークですが、労働に関する法律は、
根本的には何世代も前の社会を前提にしています。
つまり、法律や法律の考え方が現代に合っていないこともままあります。

その一例でもあるテレワークにおける労働時間の管理に関して、
・基本的な考え方
・テレワークにおける勤怠管理方法
・テレワークにおける中抜け時間の取り扱い
・テレワークにおける時間外労働
についてご紹介したいと思います。

 

基本的な考え方-テレワークでも労働時間の考え方は変わらず

テレワークであっても、出社型と基本的には同じ労働時間制度。
例えば、出社型においては1日8時間、週40時間制のスタンダードで固定的な労働時間制をとっている場合には、
テレワークにおいても同じ労働時間を適用します。
フレックス制度や裁量労働制でも同じです。

ただ、同じテレワークでも、通勤時間がなくなるとこれらの制度は変更される場合があるでしょう。

テレワークにおける勤怠管理方法

基本的な考えは同じだとしても、テレワークにおける労働時間管理では
「勤務開始と業務終了が把握しにくい、休憩時間がとりにくい」
などを懸念する場合があるかもしれません。

①報告ルール決め

そのようなときには次のようなルール決めが役に立ちます。

例えば次のような報告をメール、チャットツール、電話等で行います。
・「業務を始めます」
・「休憩に入ります」
・「休憩終了します。業務に戻ります」
・「業務を終了します」

②ツールの活用

近年は社員が勤怠打刻をスムーズに行えるようなクラウドのシステムもありますので、
自社に合ったルール、ツールを活用しましょう。

テレワークにおける中抜け時間の取り扱い

子供の送迎や通院など、私用で就業中に外出等があった場合、賃金支払いの対象外です。
出社型に加えて物理的にそのような場合が発生しやすいテレワークにおいても同じ考え方です。

しかし、そこで賃金カットでなく、始業終業の繰り上げ繰り下げ
で1日の所定労働時間は満たすことを認めている企業も多いです。
中抜けの際も連絡メールするようにルール決めは必要です。

テレワークにおける時間外労働

在宅勤務は長時間労働になりやすいともいえます。
また、夕食後や休日でも仕事ができてしまい、オンとオフの区別がつきにくくなりがちです。
オンラインでなおさら目に見える成果を上げようと、結果的に長時間労働になる場合も。
これに対しても、例えば、時間外にメールの送受信を控える、アクセスの制限、残業の申請等の
ルールが必要になるでしょう。
従業員の健康面と割増賃金のコストに留意しましょう。

 

まとめ

Pision合同会計事務所は税理士、会計事務所として、顧問先の中小企業様、個人事業主様
とともに、テレワークの推進業務を行っています。
テレワークを含む業務の効率化は、ひいては会社の経営改善、業績向上につながることもあり、
私たち税理士にとっても他人ごとではありません。

また、テレワークにおける労働時間の管理や労働関係の問題もありますが、
それに伴うお金の計算(給与計算)そしてそれに伴う会計や税金の処理にも影響します。

今回はテレワークにおける労働時間の注意点などを抜粋してご紹介しました。

 

 

◆従業員に対する健康診断は会社の義務です!

労働安全衛生法66条では、
「事業者は、労働者に対し医師による健康診断を行わなければならず、
労働者は、事業者が行う健康診断を受けなければならない」とあります。
こうした健康診断の受診費用は、通常必要と認められる範囲を超えるものを除き、
会社の福利厚生費として、税務上も扱われます。

なお、役員は厳密には労働安全衛生法の対象者ではありませんが、
健康管理義務がないわけではないので健康診断を受診してもらうことで、
実務上のリスクを下げることができるため、同様に会社の福利厚生費となります。

ただし、受診費用の会社負担対象者が役員や特定の地位にある者だけとされている場合には、
その者に対しての給与として課税されます。
つまり源泉徴収を行う必要も生じます。
さらに、役員の場合、定期同額給与に該当しない給与(賞与)として
損金不算入として扱われます。

◆役員・使用人の配偶者の健診費用会社負担があったら?

では、会社が役員または使用人の配偶者分の健診費用を負担している場合はどうなるでしょうか?
もちろん、その役員または使用人の給与(経済的利益の供与)として扱われます。
課税扱いとなる理由は、会社は法律上その配偶者の健康診断の実施義務を負っているわけではないためです。

◆健診費用の消費税での課税仕入れ不課税

会社の福利厚生費として扱われる健診費用は、自由診療に該当し、
消費税は課税仕入れとして扱います。

一方、給与扱いとなってしまった場合には、消費税の計算においては不課税となります。
領収書に消費税額の記載があるからと言って、課税仕入れとして扱ってはならないのです。
ひっかからないように気をつけましょう。

働き方改革が叫ばれて久しく、大企業でも副業・兼業を許容、推進する会社が登場しています。
そこで、雇用する側として気になることの一つが、労働時間の管理です。

今回は、副業・兼業における労働時間の管理・時間外労働について紹介します。

結論から言えば、「副業・兼業の時間も含めて労働管理、時間外労働の計算が必要」だということです。

・国も副業・兼業を認めてる?
・データでみる副業や兼業の増加
・そもそも基本的に労働時間で気を付けるべき点は?
・副業や兼業に関連して気を付けるべき点は?

 

国も副業・兼業を認めてる?

厚生労働省が発表している「モデル就業規則」では、
2018年1月以降、「副業・兼業」という章を追加しています。
そこでは、副業・兼業を原則容認する内容に変更しています。

データでみる副業や兼業の増加

厚生労働省によれば、次のように副業に関するデータが発表されています。

副業を希望する雇用者数(雇用者に占める割合)

1992年の235万人(4.5%)から2017年385万人(6.5%)

副業雇用者数

1992年の76万人から2017年には129万人へ増えています

そもそも基本的に労働時間で気を付けるべき点は?

中小企業には2020年4月から、大企業には2019年4月から、
時間外労働の上限規制(罰則あり)が適用されています。

その内容は以下の通りです。
・36協定による原則の上限時間(月45時間、年360時間)を超えることはできない
・ただし、36協定で特別条項を締結することができる
・特別条項によって、月100時間未満、2~6月平均80時間以下、年720時間以下までの時間外労働が認められる。

副業や兼業に関連して気を付けるべき点は?

さて、ここで問題となるのは、この時間の数え方です。
労働基準法38条1項では、「労働時間は、事業場を異にする場合においても、(中略)通算する」とあります。

つまり、事業主(会社)が異なる場合でも通算されます。

例えば…副業・兼業での労働時間管理

例えば、A社(1日5時間、残業なし)で雇用されている労働者が、
新たにB社(1日3時間&残業2時間)で雇用された場合、
1日のうち、B社で勤務後にA社で勤務したとしても、
後で雇用契約を結んだB社の2時間が時間外労働となります。

なお、副業・兼業開始前に両社の合計所定労働時間を法定内で設定する「管理モデル」を導入した場合は、
法定労働時間を超えた時間に働いている会社で割増賃金が発生することになります。

まとめ

いかがでしたでしょうか?
副業・兼業を認めている場合、既に副業・兼業をしている方を雇用する場合には、
要注意です。

なお、もちろん今回の話は、労働基準法上の労働者でない場合(フリー、独立・起業、共同経営など)や、
労働時間規制が適用されない場合(農業・畜産業・水産業、管理監督者など)は、関係ありません。