前回 は消費税のごく基礎的な内容をご紹介しました。
中でも、「1,000万円」という基準について解説しました。

今回はこの「1,000万円」の基準について、その例外をご紹介します。

・1,000万円の基準の復習
・2期前が1年間より短い場合
・新しく設立した法人の場合
・大きい法人の子会社の場合
※平易な説明にするため多少正確ではない表現が含まれます※

1,000万円の基準の復習

まず前回の復習です。

消費税の申告をしなければならないのは、「2年前の売上額が1,000万円を超えた場合」でした。
例えば、2020年で初めて一年間の売上が1,000万円を超えたとすると、2022年は消費税の納税義務者になる、
という基準でした。

 

2期前が1年間より短い場合

では、2期前、2年前が1年間でなかった場合にはどうなるでしょうか?

まず、それは例えば次のような場合です。
・法人設立1年目や、開業して1年目
・法人の事業年度を変えた

そのような場合、判定に使う「1年間」は、

その2期前の実際の売上高×(12か月÷その2期前の月数(端数切り上げ)

で算出します。

例えば

設立1年目の売り上げが900万円、設立が4/5、事業年度終了が12/31だとすると、
900万円×(12÷9)=1,200万円

と計算します。

 

新しく設立した法人の場合

また、新しく設立した法人であっても、

設立日における資本金額が1,000万円以上だと、設立から消費税の課税事業者となります。

1人でまずは小さく始めるつもりで法人を作るときにいきなり資本金を1,000万円用意することは比較的稀だと思います。

しかし、例えば

数人で新しい事業を始めようとしたり、比較的大きな法人との取引のためにある程度の資本金が必要とされる
ケースにおいては、注意が必要だといえます。

大きい法人の子会社の場合

さらに、資本金額が1,000万円みまんであっても、大きな法人の子会社として設立される場合も
設立から消費税の課税事業者となる可能性があります。

具体的には、次の要件を満たすと該当します。
・50%超を誰かに持たれている
・その誰か、その誰かの関係者、関係法人のいずれかの課税売上高が5億円超えている

例えば、

・売上高がいつも5億円を超える法人が、子会社を作る場合、
・子会社ではなく、その株主が兄弟会社を設立する場合

などには要注意です。

 

”1,000万円で消費税が変わる”といった漠然とした情報のみで、
詳しくは知らない方が多い消費税の仕組みについて、
ご紹介します。

※超入門の基礎編なので、特例などに該当する事業者様は要注意してください※

・消費税の大原則
・1,000万円とは?
・簡易課税とは?

消費税の大原則

消費税の仕組みは、 (さらに…)

昨今にわかに認識や問題意識が広まりつつある消費税、いわゆるインボイス制度。
なんとなく理解している方はいても、実際何が変わるのか、どのような影響があるのか
きちんと理解しきれていない方も多いのではないでしょうか。

特にインボイス制度の導入の目的の一つになっている消費税の免税事業者にとっては、
かなりの影響があります。

今回は、インボイス制度における免税事業者の取り扱いのうち、下記をポイント解説します。
・インボイス制度の概要は?
・免税事業者への影響は?
・免税事業者も登録したほうがいいのか?
・免税事業者が登録する場合の方法は?

 

インボイス制度の概要は?

2023年10月1日から始まる「適格請求書等保存方式(いわゆるインボイス制度)」を
簡単に言うと、
①消費税の仕入税額控除を適用するためには、適格請求書(インボイス)が必要
②①のインボイスを交付することができるのは、「適格請求書発行事業者」だけ
③③の適格請求書発行事業者となるためには、消費税の課税事業者となって、発行事業者登録をしなければならない
という制度です。

そして、③の適格請求書発行事業者の登録申請は、2021年10月1日から始まっています

免税事業者への影響は

上記の通り、消費税の仕入税額控除の適用は、必然的に消費税の課税事業者からの仕入に限られることになります。
つまり、免税事業者からの仕入に関しては、消費税の仕入税額控除ができない、というのが原則です。

インボイスを発行できない免税業者からの商品やサービスの購入では
仕入税額控除が取れないとなると、取引の相手先として選ばれなくなる可能性が高くなります。
よほどの独自性などがないとその可能性は高まります。
仮に選ばれたとしても、消費税額分の値引きを要求される可能性もあります。

※免税事業者からの仕入税額控除に関して、6年間の経過措置がありますので、直ちに影響がない可能性もあります。

免税事業者も登録したほうがいいのか?経営面から検討!

では、免税事業者は必ず消費税の課税事業者となることを選択し、適格請求書発行事業者に登録
しないといけないか、というと、そう単純な話でもありません。

この適格請求書発行事業者となるか否かの選択は、実は、
経理・税金の問題というよりも、ビジネスの経営面から考えるべきともいえます。

極端な例ですが、仕入先や売上先がともに免税事業者である場合には直接的な影響は少ないだろうし、
売上先が消費税の課税事業者ではない場合にも、影響は小さい可能性があります。
税金の影響や対応する手間などまで加味すると、どちらが有利かということも断定はかなり難しくなります。

免税事業者が登録する場合の方法は?

検討の結果登録する場合には、2023年3月31日までに申請しなければなりません。

免税事業者が登録申請するなら「登録における経過措置」利用がおススメ?

免税事業者が適格請求書発行事業者となるためには、原則としては先に課税事業者登録をしなければなりません。
しかし、次のような経過措置があるため、この経過措置の適用のほうが簡単な場合があります。

経過措置:2023年10月1日の属する課税期間中に登録を受ける場合には、
「消費税課税事業者選択届出書」の提出は不要

ちなみに、同じ事業年度内でも2023年9月30日までは免税事業者、10月1日から課税事業者とすることもできます。

さらに、「簡易課税制度」で、納税額が少なくなるようでしたら、その適用も検討してみるべきです。

 

まとめ

免税事業にとってのインボイス制度についてまとめると、

・取引から排除される可能性はある
・ただし、免税事業者でいい場合もあるので検討しましょう
・課税事業者になる場合には、経過措置の適用も検討しましょう

ということ。つまり、ケースバイケースが多い!ということです。

Pision合同会計事務所では税理士の担当者から各お客様に対して、
詳細のご説明、有利不利の考え方をお伝えし、対応をしております。

ご不明点等ございましたらPision合同会計事務所までお問い合わせください。

消費税のかかる取引の要件の一つとして、「国内」があります。
では、宇宙空間での取引は「国内」にあたるのでしょうか?

 

◆民間宇宙ビジネスは急成長分野

米イーロン・マスク氏が設立したスペースX社は、
民間企業の製造・所有する宇宙船を用いて、
初めて国際宇宙ステーション(ISS)への有人飛行に成功。

堀江貴文氏も「世界一低価格で便利なロケット」の開発を目指すと、
宇宙ビジネスに参入していますが、
人工衛星の打上げ費用は2億ドルはかかると言われていた時代もありました。
近年では6,000万ドルまで削減することに成功したそうです

◆20年前に人工衛星の消費税の取扱いがでてた?!

判例データベースTAINSには、行政文書も掲載されています。
「人工衛星の輸入、打上げ、宇宙空間における譲渡」
内容は、外国法人A社が保有する人工衛星を、日本法人B社を輸入者として日本に輸入
その人工衛星の打上げを委託された日本法人C社が日本から衛星を打上げ
その後、衛星が宇宙の軌道に乗ったことを確認後、
A社からD社に人工衛星を譲渡したというシチュエーション。
これら①輸入・②打上げ・③宇宙空間における譲渡の消費税の取扱いが記されています。

◆宇宙空間にある人工衛星を譲渡したら?


①人工衛星の輸入取引
輸入名義人のB社の仕入税額控除
②人工衛星の打上げを受託した場合
非居住者(外国法人A社)の依頼により行う人工衛星の打上げは、
非居住者に対する役務の提供に該当=輸出免税
③宇宙空間にある人工衛星の譲渡
消費税法上、国内とは「この法律の施行地」をいい、宇宙空間はどの国の主権も及ばない区域。
衛星が宇宙の軌道に乗ったことを確認した後に行われる人工衛星の譲渡は、
資産の譲渡が行われた時に資産が国外に所在するため、
国内取引に該当しない=日本の消費税の対象とならない
宇宙

原状回復費用とは、アパートやマンションなどを賃借していた人が退去するとき。
次の入居者のためにもとのきれいな状態に直す工事費用です。

この原状回復費用について、一般的な知識と会計税務の取り扱いを確認しましょう。

・原状回復費用はだれが負担するか?
・原状回復費用の消費税は?
・一般的な感覚と会計税務の違いは?

 

原状回復工事費用はだれが負担するか?

昔は、原状回復費用は賃借人がすべて負担することが多かったようです。
ただ、裁判まで発展することも多々あり、その結果、
「年月を経ることによる通常損耗(壁紙の劣化等)は賃借人が賃貸人に支払った家賃で填補されている」
として、賃貸人の負担となりました。
ただし、通常の損耗以外(器具等の破損等)は賃借人の負担となります。

そして、現実的では、賃貸借契約書でどちらが何をどれくらい負担するかが
細かく決められている場合がほとんどなので、よく確認しましょう。

原状回復工事費用の消費税は?

・アパート・マンションの家賃収入消費税は非課税…居住用の賃料
・賃貸人が負担する原状回復工事費用は課税仕入れ(非課税売上対応)…賃収入を得るための費用のため
・敷金保証金から支弁する原状回復費用は課税(課税対応)…差し引く敷金保証金が課税売上となるため

一般的な感覚と会計税務の違いは?

一般的な感覚では、賃借人が支払っている原状回復費用は、賃貸人を通して工事会社に支払っているので、
”立替金”という気がします。

しかし、会計税務の実務では、下記のように、賃貸人にとっては、費用と収入で処理することが多いです。
実際にはかかった工事費用よりも請求されているかもしれないですね…

・原状回復工事費用を工事会社に支払時
(修繕費)/(現預金)

・賃借人に負担分を差し引いて返却時
(保証金)/(雑収入)負担分
     /(現預金)差額
 

まとめ

Pision合同会計事務所のお客様には多くの不動産オーナー様がいらっしゃいます。
その分物件も多く、このような事象、ご相談も多くいただいております。
一般的なものを紹介しましたが、実際には取引や事情により個別で確認する必要があります。
判断に迷ったり不安になった際には、顧問税理士にご確認下さい。